年々増え続けているうつ病
厚生労働省「患者調査」によると、「気分[感情]障害等」を患っている人数は平成8年に43.3万人だったのが、平成29年では127.6万人と3倍近く増加している。
「気分[感情]障害等」の一つである「うつ病」が増えている原因として、社会情勢や近年のストレス社会を例に挙げられることが多いが、原因はそれだけでは無いと思う。なぜなら人間は常にその時代ごとに苦労をすることはあっただろうし、幸福や不幸の価値観もその時に応じて変化してきたはず。現代だけが精神を病みやすい社会になってきているという説明には限界がある。
うつ病が増えている原因を4つ考えてみた。
1.製薬会社による うつ病の啓発活動の結果
このCMの製作元は「グラクソ・スミスクライン(GSK)」というイギリスに本拠地を置く大手グローバル製薬企業である。このCMは「うつ病啓発キャンペーン」の一環で制作された物のようだ。同キャンペーンでは「うつ病 小冊子」を配布し、専用フリーダイヤルを設けて4万件近くの問い合せを受けたそうだ。おそらく多少心当たりのある程度の人々が不安を煽られて問い合せをしたのだろう。
「一連の啓発活動の結果、広告認知者ほど”うつ病はだれでもかかりえる病気”、”適切な治療で治る”という理解を示した」というレビュー調査をわざわざ行っている。
GSK うつ病啓発でアクセス15万件
2003/03/04 23:00
グラクソ・スミスクライン(GSK)は3月4日、全国主要新聞とテレビCM(関東、関西地区)で昨年9月から12月までに行った「うつ病啓発キャンペーン」の結果を発表。期間中、3万9601件の問い合わせがコールセンターに寄せられ、専用インターネットサイトには11万7575件のアクセスが記録されたことが分かった。キャンペーンは、うつ病に対する誤解や偏見をなくし、早期診断を促すことを目的に実施。製薬企業によるこうしたうつ病に関する大規模キャンペーンは日本で初めての試みという。期間中、専用フリーダイヤルを開設し、希望者に「うつ病 小冊子」を提供。同時に、うつ病に関する詳しい情報を提供する専用インターネット「こころのくすり箱」も開設した。モニター調査も並行実施。啓発広告によるうつ病の認知、理解度やイメージの変容、啓発広告の印象などについて約6000人を対象に実施したところ、広告認知者ほど「うつ病はだれでもかかりえる病気」「適切な治療で治る」と、理解が深かった。一方で、多くの人が、うつ病の治療で医療機関を受診することに対して「特別なことだと思う」と回答。うつ病治療は依然として敷居が高いことがうかがえる。
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=27841
この記事は「うつ病啓発キャンペーン」の半年前の記事で、2000年に発売したパキシルが順調に売上を伸ばしているという内容のもの。医療関係者や株主等からしたらパキシルは「大型製品に成長した」製品であり、「順調に売上を伸ばしている」喜ばしいニュースなのだ。
GSK 「パキシル」01年売上高120億円と好調に推移
2002/4/10 00:00
グラクソ・スミスクラインが2000年11月に発売した抗うつ剤「パキシル」(一般名・塩酸パロキセチン水和物)は、年間売上高が100億円を超える大型製品に成長した。01年(1〜12月)の売上高は120億円(薬価ベース)となり、順調に売り上げを伸ばしている。
「パキシル」は99年に明治製菓が発売した「デプロメール」(藤沢薬品工業が「ルボックス」で並売)に続く国内2番目のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)。うつ病、うつ状態に加え、国内で初めてパニック障害の適応が認められている。発売時期はデプロメールより約1年間遅れたが、直近の売上高はすでに100億円を超えた。
海外での10年以上にのぼる販売経験ですでに安全性、有効性が確立しているほか、「1日1回投与」で効果を発揮する特徴が医療現場の支持を得たようだ。マーケティング本部中枢神経領域部の中川恒司プロダクトマネジャーは「(うつ病患者が増加するなかで)パキシルが投与される機会が増えていくという感触はつかんでおり、売り上げは今後も着実に伸びていく」と予測している。
今後は内科など専門科以外にもプロモーション活動を展開し、さらなる売り上げ拡大をねらう。また、すでに海外で認められている適応症を中心に追加申請の準備も進めている。現在、強迫性障害(OCD)と社会不安障害(SAD)に関するフェーズ2を実施中。同製剤は90年に英国で初めて承認されて以来、現在、世界100か国以上で使用されており、投与患者は推定8000万人以上。全世界の売上高は01年(1〜12月)で18億5700万ポンド(約3565億円、最新の為替レートで計算)。
https://nk.jiho.jp/article/p-1226550375359
SSRI系の薬には依存性があるため急にやめることはできない。SSRI系の薬を止める場合は徐々に減量していく必要があるため、一度患者に飲ませてしまえば、決められた用量を飲み続けなければならないので継続的に売上が得られる。
「うつ啓発キャンペーン」は、うつ病に悩む人々の為ではなく、パキシルの大きなマーケットを見据えた製薬会社による私腹を肥やすためのキャンペーンだったのだろうか。このような市場拡大を目的とした啓発活動のことを「病気喧伝」と呼ばれているが、このような病気喧伝はシオノギ製薬と日本イーライリリー株式会社でも同様に行われている。
2.行き過ぎた健康志向
巷には行き過ぎた健康志向や誤ったダイエット方法の情報が溢れている。例えば、とあるヨーグルトのCMではキャッチーなリズムとともに塩・糖・脂を悪者と見立てているが、いずれも人間が生きるのに必要な栄養素だ。
塩にはミネラルが含まれており、減塩しすぎるとミネラルの摂取量が減ってしまい様々な症状が出る。食事によって摂取したたんぱく質はカルシウムとビタミンCと胃酸によって、グルタミン、フェニルアラニン、トリプトファンなどが生成される。そこからミネラル・ビタミンによってドーパミンやノルアドレナリンやセロトニン、メラトニンなどが生成される。ミネラル・ビタミンが不足すると、それら神経伝達物質が十分に生成されず、精神疾患の要因となる。
糖質が不足すると低血糖になり、脳に栄養が行かず眠気、イライラ、時にはうつっぽくなる事もある。血糖値はインスリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンで一定値が保たれているが、高血糖時は血糖値を下げるためにインスリンしか出ないためそれほど精神に影響は出ないが、低血糖時には血糖値を上げるべく、交感神経を刺激する様々な種類のホルモンが分泌されるため、イライラ、不安感、動悸、頭痛などうつと診断される症状が出てくる。
脂肪は細胞膜やホルモンをつくるために必要な原料となっており、コレステロールの4分の1が神経細胞を構成している。全く取らないと細胞を維持する事ができない。
3.誤ったダイエット
以下のアンケートでは、ダイエットの方法として半数が食事制限をしているそうだが、やり方を間違えると逆効果になる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000492.000007815.html
食事制限によって真っ先に落ちるのは筋肉であり、食事制限によるダイエット初期に減った体重は大体筋肉が落ちている。それは痩せたわけではなく、足りない栄養素をカバーするために筋肉を削ってエネルギーに回しているだけであって、筋肉が落ちるという事は基礎代謝が落ちて太りやすい身体になったということ。
また、最近カップラーメンにしても低カロリーを売りにした商品が販売されているが、カロリーが低ければ太らないというわけではない。例えば、同じカロリー量で肉か米を食べるなら、米のほうが太りやすい。なぜなら米を代謝するエネルギーは肉よりも少量で済むためである。
無理な食事制限によるダイエットは成功率は低いだけでなく逆効果になりかねない。リバウンドで済めば良いが、精神まで壊してしまわないよう注意が必要である。
4.最近の栄養事情
よく最近の野菜は青臭くないと言われる。これは品種改良によるものであり今の野菜は昔の野菜よりも栄養が減っているといわれている。
更に、保存技術の向上によって収穫から時間の経った食材が流通しているが、見た目は同じでも収穫から時間が経った食材は確実に栄養価が落ちている。
時間や手間の節約のために冷凍食品やレトルト食品が利用されるが、それら加工食品の栄養価は著しく落ちている。現代の食事情では普通に食事を取っても栄養失調になる場合があるのだ。それもうつが増加している原因の一つではないかと思う。
精神疾患の治療は主に投薬
シオノギ製薬と日本イーライリリーによるうつ病の啓発サイト「utsu.ne.jp」によると、うつ病の治療方法は「休養と薬物療法」をメインとしており、オーソモレキュラー療法等の他の治療方法は書いていない。
また、うつ病になる原因は「過剰なストレスや過労など」としか書いていない。ちなみに「うつ病の症状チェックシート」を見てみると低血糖症やビタミン・ミネラル不足による症状と被っている項目が少なくない。
うつ病などの精神疾患の診断は、米国国立精神保健研究所で作成された診断マニュアルに基づいて行われている。精神科医である立場上「うつ病の原因は過度なストレスや過労などであり、治療方法は休養と投薬治療である」としか言えず、精神科という畑の上でしか治療方法を提示できない。
実は低血糖症からの症状であったり、栄養失調によるホルモンバランスの崩れであっても、それなりの病名を診断されてSSRI系やベンゾジアゼピン系の薬を処方される。しかし根本的な解決ではないためいつになっても治らない。それら薬は依存性があるため、薬をやめる事もできず、徐々に効かなくなって増量される。
心身ともに健康に生きるためには
テレビでゴーヤが健康にいいと言えばスーパーからゴーヤだけが消えて、ツナがいいと言えばスーパーからツナだけが消える。
健康にいいものを沢山取れば健康になるわけではなく重要なのはバランスである。健康とされる食材を食べるために栄養バランスを欠いていたら元も子もない。テレビ番組に陽動されているような人は健康はなれないだろう。
心身ともに健康に生きるためには、朝早く起きて、日光を浴びて、3食バランスのいい食事を取り、よく運動をして、よく寝ることに限る。そして時にはストレス発散や気分転換のために趣味に打ち込み、友とよく笑い、他人を思いやる。
誰でも知っていて、誰でも思いつくような”ありきたりな事”は見過ごされがちであるが、実はこれが一番重要なことであると、自分自身、パニック症になった事で身をもって実感している。